見たらビックリ?!~穴だらけのミステリアスな史跡「吉見百穴」~

皆さん、「吉見百穴」って聞いたことありますか?そして何て読むのでしょう?

吉見百穴は国指定史跡に指定されているのですが、文化庁の国指定文化財等データベースでは「よしみひゃっけつ」、一方吉見百穴がある埼玉県吉見町のホームページでは「よしみひゃくあな」と書かれています。歴史辞典などにも両方の読み方が出てくることからどちらも合ってるそうですが、県民の私には「ひゃくあな」の方がしっくりときます!

さてその吉見百穴。
一度見たら忘れられないほどの不思議な景色だと聞いていたのでいつか行ってみたいなぁと思っていましたが、先週ふと「あれ?今日行ってみようかな」と思い立ち、ささっと準備して1人気ままな日帰りドライブを決行。
途中雨がポツポツと降ってきたのですが、運のいいことにすぐ止み途中で晴れ間ものぞいてきました。

 

◆ とにかく不思議な景観


斜面に広がる穴、穴、穴

着いて驚いたのがやはりその景観。目の前に現れた時は一瞬何だか分からなかったほど。
目の前に現れた無数の穴が織りなす奇観に圧倒されてしまい、目が釘付けになってしまいました。見れば見るほど不思議な風景ですが、思いのほか桜とマッチしています。
しかしこれだけの数の穴は何のために作られたのでしょう・・・

 

◆ 横穴はコロボックルの住居?

江戸時代の中頃にはいくつかの横穴が開口しており地元の人から百穴と呼ばれていたそうですが、何のためなのか誰も分からなかったのだそう。
その後明治20年に、弥生土器発見者の1人でもあり日本初の人類学者である坪井正五郎による発掘調査が行われ、日本人用としては小さいものの住居のような構造をしていたことからコロボックル用に作られた住居だという説を唱えました。しかし弥生土器の共同発見者の白井光太郎が、古墳の石室と同じような特徴があることやコロボックルの存在が確認できていないことなどの理由により、横穴はお墓だと反論したそうです。
これにより住居なのか墓なのかの論争が20年以上続きましたが、坪井氏の死去に伴い墓群だということが定説となり、大正12年に国指定史跡に指定されました。

 

◆ 地下に広がる軍需工場跡


今は調査のため入れなくなっています。

さっそく見学しようと思ったら一角に「地下軍需工場跡」の看板を見つけました。
吉見百穴と周辺の丘陵地帯の地下には、太平洋戦争の空襲を避けて航空機のエンジン部品を製造するための巨大な軍需工場が造られたのだそうです。その出入口が吉見百穴の一部に設けられ、その際に一部の横穴が破壊されたのだとか。
今でも吉見百穴の地下には碁盤の目状に掘られたトンネルが残っていて以前は内部見学ができたそうですが、崩落の危険があり点検調査をしているため現在は入れなくなっています。

トンネルが奥深くまで伸びているのが分かります。また見学できるようになりますように。

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柵の間から撮った軍需工場跡の内部。奥からひんやりとした風が流れてきていました

 

◆ 横穴墓の中の様子

吉見百穴という名前から穴が100基あるように思えますが、実は219基もあるのだとか。坪井氏の発掘当時には237基の横穴が見つかりましたが、軍需工場を作る際に一部が崩されてしまい、現存するのは219基になりました。
一部の横穴墓は中に入ることもできますよ。古墳時代のお墓に入れる機会はなかなかないので、さっそく入ってみました。


穴の内部。玄室に棺座が2つあるのが分かります。

横穴は通路部分の先が大きな空間になっています。
この大きな空間は玄室と呼ばれ、遺体を安置する棺座が設けられています。玄室は平面が正方形や台形、長方形、楕円形など8種類の形態があり、また天井はドーム状を中心に平天井やアーチ状など6形状に分類されているなど様々な形状があり、ひとつひとつ異なるのだとか。
棺座がない玄室もあれば、単棺座・2棺座・3棺座と複数の棺座が設けられた玄室があること、また横穴墓の入口にはもともとは石の蓋が立てかけられていて蓋を外せば中に入れることから、1つの横穴に複数の人を埋葬する「追葬」を前提とした構造になっているそうです。


単棺座

 

 

◆ 天然のヒカリゴケ

吉見百穴にはもう1つ貴重なものがあります。
それがヒカリゴケ。一般的には中部以北の山地に見られるそうですが、関東平野に自生していることは植物学上極めて貴重なことから国の天然記念物に指定されています。ヒカリゴケはコケ類の一種で生育には一定の気温と湿度が必要ですが、吉見百穴の横穴墓がその条件に合っているのだそう。
中をのぞいてみるとほんわかと黄緑色の光が見えました。古墳時代のお墓に天然記念物のヒカリゴケがあるなんて、ロマンがある気がしませんか?

 

◆ 五家宝をいただいて一休み


埼玉銘菓の五家宝

園内にはお土産屋さんがあり、埼玉県の和菓子「五家宝(ごかぼう)」がありました。
五家宝はおこし棒状に固めて表面にきなこをまぶしたもので、埼玉の三大銘菓の1つです。ちなみに他の2つは草加せんべいと川越の芋菓子。どれも大好きなお菓子です♪
きなこの他、チョコやクランベリーなどいろいろな種類がありましたが、季節限定のさくらをいただくことに。1本売りをしているので気軽に食べられます。

最後に吉見百穴を眺めながら五家宝とお茶をいただくという贅沢な時間も楽しむことができ、埼玉を満喫できた1日になりました。

 

吉見町は吉見百穴の他にも黒岩横穴墓群や和名埴輪窯跡群、三ノ耕地遺跡など史跡や文化財が多い町としても知られています。
興味のある方はぜひ訪れてくださいね。車が便利ですが吉見百穴は電車とバスでもアクセスできますよ。

 

スタッフ:TK

吉見百穴/ヒカリゴケ(吉見町ウェブサイト)